ブータンを、国際的にも際立つ存在とさせているのが、このユニークな国の政策指針、GNH: Gross National Happiness、国民総幸福という概念です。ブータン政府は、GNHについて、以下のように定義づけています。
GNHとは、社会における、
「物質的な豊かさ」と、「精神的・感情的・文化的な豊かさ」の
適正なバランスをとるための
“開発におけるアプローチ”です。
“国民一人ひとりの幸福”は、
国家における究極の目的であることから、
基本的な環境・生活条件を整えること
が重要です。
ブータンの外ではよく、「ブータンは世界一幸せな国である」と報道されがちですが、実はブータン王国は、自らそのように発言したことは一度もありません。GNHとは、あくまで国家の“開発におけるアプローチ”であり、ブータンは、「国民一人ひとりの幸せを、国の発展における目標とする国」であるにすぎないのです。
GNHについては、ブータン内外で様々な研究がなされていますが、一般的に、1970年代、ジグミ・シンゲ・ワンチュク第4代国王によって提唱されたといわれています。その後しばらくは抽象的な概念のままでしたが、2008年の民主化以降、より実践的な国の政策指針として用いられるようになりました。具体的には、以下のような取り組みが行われています。
- GNH委員会の創設
どの政党にも属さない独立した政府機関として、各省庁が立案した政策や、海外からの援助内容が、GNHの指針に沿っているか、審査をする役割を果たしています。 - GNHインデックスの開発
以下の図に示すGNHの9つのドメインと33の項目を用いて、ブータン国民の幸福度を測るツールです。 - GNH調査の実施
GNHインデックスを用い、定期的に、国民の幸福度を測るGNH調査を行っています。インデックスの詳細や、2015年に実施された最新の第3回GNH調査結果については、GrossNationalHappiness.comをご参照ください。
ブータンを語るには欠かせない、GNH。現政権による年次レポート、『The state of Tsa-wa-sum』(”tsa-wa-sum”とは、”国王、政府、国民”の意味です)も、GNHの4本柱に基づいて構成されています。『ブータンの今』を体系的にご紹介するにあたっても、やはりGNHのストラクチャーに沿ってご説明するのが一番だろう、ということで、これから少しずつ、以下の図に示す構成に沿って、記事を追加していきたいと思います。
※昨年、2015年の『The state of Tsa-wa-sum』全文はこちら。
※過去の政府レポート一覧は、こちらからご覧いただけます。
※今年6月にまた最新版の『The state of Tsa-wa-sum』が発行される予定ですので、その内容に応じ、内容は随時修正させていただく可能性がございます。